第7回健康セミナー 加齢と皮膚 ~エイジングとスキンケア~


2006年2月9日    
皮膚科 大越賢一郎先生 
 皮膚の果たす役割は意外と重要です。皮膚は薄くてしなやかな人間の体を覆う最大の感覚器官で、内蔵を包み込み、細菌やウィルスなどの微生物や日光の紫外線から身を守り、生命維持に必要な水分や体液を維持するのになくてはならない臓器です。解剖学的に言うと皮膚の構造は大まかに分けて4層(角層、表皮、真皮、皮下組織)になります。角層は皮膚の最も重要な働きであるバリア機能を担っています。角層は死んだ細胞の層であることから、普通「アカ」として扱われます。その一方、角層は皮膚の表面なので、「素肌」として皮膚・肌ととらえられています。また、表皮、真皮、皮下組織には人間にとって必要不可欠な痛み、かゆみ、暑さ(熱さ)、寒さを感じ取る神経や血管がたくさん網の目状に広がっています。そして体温を調節するのに不可欠な汗腺、脂腺の通ずる毛穴が無数にあります。これらの組織が生まれたときから徐々に老化(加齢)をしていきます。赤ちゃんの肌はポチャポチャしてしっとりしています。これが皮膚においては年齢とともに様々な症状として現れてきます。エイジングに伴う皮膚の変化は主に次のようなものが挙げられます。

 1.しみ 
 2.しわ(皮溝) 
 3.老人斑(脂漏性角化症) 
 4.スキン・タッグ 
 5.日光黒子 (日光が原因でできるほくろ) 
 6.日光角化症 
 7.爪の変形、塑造化 
 8.日光による皮膚腫瘍の出現(基底細胞癌、有棘細胞癌)

 このような皮膚病変をなるべく出さないようにするためにも普段からお肌のお手入れは気をつけましょう。そこで、朝から時間経過とともに1日のスキンケアを検証し、推奨案を挙げてみました。

<1日の中でのチェックポイント>

洗顔

固形の石鹸をよく泡立てて脂が出てきやすいTゾーン(眉毛、鼻、あご)を中心になでるように優しく洗いましょう。乾燥しやすい眼の周りや頬は軽度でよいでしょう。洗顔後は保湿剤(化粧水、乳液、クリームなど)をつけましょう。

朝食

気分の乗るようなものをだいたい決まった時間に取るのがよいでしょう。パセリやセロリなど、太陽光線を感じやすくする(光老化が進む)ような食材は避けましょう。

外出時

化粧をするか日焼け止めをぬり、できれば帽子をかぶりましょう。また、太陽光線から眼を守り、白内障の予防のためにサングラスをすることも重要ですが、あまり色の濃いレンズは瞳孔を広げすぎるのでかえって眼によくないことがあります。

日中(仕事中など)

トイレに行くのを我慢すると(眉間などに)しわが増えるので、我慢しないようにしましょう。手洗い後に保湿剤をぬりましょう。

昼食

腹八分目にしておきましょう。デザートの甘いものもほどほどにしないとニキビ・吹き出物のもとになります。

午後

右脳を刺激するような華道・茶道・絵画・音楽鑑賞等の芸術・感覚的なことに触れたり、左脳を刺激するような計算・読書・SUDOKU等をしたりするとよいでしょう。

入浴の際、体の洗い方は要注意です。ヘチマなどでこするのは厳禁!ボディーソープは泡立てないと必要以上に皮脂を取り去り、乾燥のもとになり、さらにはカサカサした皮膚に洗剤の成分が残るとかぶれ等の原因になります。かかとを軽石でこするのはもってのほかです。入浴後に髪を乾かすのは頭皮の衛生さを保つのに重要で、怠ると脂漏性皮膚炎の原因(菌が繁殖する)になります。保湿剤はお肌がしっとりしているうちに、全身にまんべんなくぬりましょう。

 しょっぱいものや脂っこいもの、辛いもの、そして飲酒はほどほどにしましょう。洗い物をするときはブラシを使うか、手袋をつけて、洗剤は薄めたものを使うのもよいでしょう。眠いときに寝るのが一番!夜の10時から2時の間に眠っていることはお肌を整えるのにすごく大事です。加えて大事なのは•お肌に対して刺激になるような嗜好品(タバコ、酒、しょっぱい漬物、辛いもの、ピーナッツ、コーラ、コーヒーなど)はなるべく避けるか、ほどほどにしましょう。

 以上のように、お肌のお手入れは見た目をきれいに見せるだけの目的ではなく、長い眼で見た場合に悪性疾患の出現を防ぐ意味合いも大いにありますので、面倒くさがらずにご自分をいたわっていただきたいと思います。

 なお、当日会場でご協力いただいたアンケートの結果を集計しましたのでグラフにして提示いたします。ご参考になさってください。