成人病とその予防 (JDNet 2003年3月1日号より)
1月28日 火曜日(19時~21時) 在デンマーク日本大使館インフォメーションセンターにて、日本人のお医者様にご協力いただき「健康を考えようの講演会(勉強会)」を開催いたしました。
講師は、2003年9月よりRigshospitaletでの脳死肝移植の研究のため、1年間の予定でデンマークに滞在しておられる俵藤 正信(ひょうどう まさのぶ)先生です。
当日は、悪天候にもかかわらず、会場がほぼいっぱいになるほどの、40名のかたがたにご参加いただき感謝申し上げます。
今回初めて、"日本人会"との合同で企画した講演会で、俵藤正信先生のお話のテーマは「成人病とその予防法」です。
はじめにTak til Danmarkの杉下則子が開会のあいさつ、続いて司会者が本日の会の内容について-前半は俵藤先生のお話、休憩をはさんで後半は質疑応答の時間、さらに、デンマーク赤十字社からBo Breuning Depner氏がごあいさつに来られることなどを説明し、俵藤先生のご紹介のあと、いよいよ始まりました。
ー以下は俵藤先生のお話の概略ですが、紙面の都合上、内容全般をお伝えできないことを ご了承願います。
「成人病とその予防法」
三大成人病とは、がん、心臓病.、脳いっ血で死亡原因の約60%を占めます。
若い頃からの食生活、生活習慣、持病(高血圧、糖尿病、高脂血症)が原因と考えられます。
■がん(癌)には肺がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん、膵臓がん、食道がん、乳がん、子宮がんなどがあり、がんの種類により、悪性度や進行の速さがちがいます。
それぞれのがんの特徴、症状、検査、治療、予防について詳しく解説していただきました。
■がんは早期発見が重要です。レントゲン写真、断層写真(CT)超音波などの検査をすることです。
デンマークで健康診断が受けにくい方や、日本に帰国する機会が多い方は日本での人間ドックや健康診断をおすすめします。
■心臓病・心筋梗塞とは、心臓を栄養している血管が詰まり、心臓の筋肉が死んでしまう病気のことで、心停止になり死にいたります。
狭心症は心筋梗塞の一歩手前、血管が詰まるが筋肉は死なずに戻ります。
いずれも心臓を栄養とする血管(冠動脈)の動脈硬化が原因です。
■脳いっ血には、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血の3種類があります。
心臓病・心筋梗塞も脳いっ血も、いずれも予防法としては、高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満、喫煙の予防です。
■動脈硬化の原因は、年齢、喫煙、肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病です。
■高血圧とは上140以上、下90以上で、定期的に血圧を測ることが大事です。
高血圧、高脂血症、糖尿病について、症状、検査、治療、予防の方法を詳しく解説していただきました。
まとめとして「予防法」
がん、心筋梗塞、脳いっ血を防ぐために
(動脈硬化、高血圧、高脂血症、糖尿病の予防)
① 塩分控えめ(酢、レモンをつかって塩分を
控える)、糖分も控えめに。
② 肉、魚、野菜、果物、その他バランスよく
色々な種類を食べる。
③ 朝しっかり食べて、寝る前は食べない。
(1日3食)間食も控える。
④ 禁煙する。タバコは百害あって一利なし周り
の人にも影響。
⑤ 酒はビール1本、ワイン1杯を目指し、週1回
は休む。
⑥ 十分な睡眠で疲労を残さない。
⑦ 運動は徐々に始める。 ゆっくり長く、できれ
ば毎日。(例えば歩く)
⑧ 寒いところに出る時は、血圧が上がるので
注意。
⑨ 入浴は温度を低めでゆっくりと。
⑩ くよくよしない。
⑪ 興奮しない。(すぐカッとしない。怒らない)
⑫ 薬はきちんと飲むこと。(遠出のとき忘れず
に)とくに高血圧の薬など。
⑬ 日光浴はいいですが、日焼け(やけど)は
皮膚がんになりやすい。
⑭ からだを清潔に保つ。
先生のお話の合間にも、参加者の方々から活発に質問が出され、これらの病気と予防についての関心の高さがうかがえました。
そのあと、デンマーク赤十字社(Dansk Re Kors)からBo Breuning Depner氏がごあいさつに来られて、日本人会会長のフィッシャー・緑さんにお願いして通訳をつとめていただきました。
赤十字社の活動の一つとして、「訪問の友」があり、病院や老人ホームなどの施設、あるいはアパートに一人暮らしの高齢者を訪問して、お話しのお相手をするというボランテイアですが、Tak til Danmark・ARIGATOUは、これから増えていくであろう日本人高齢者を日本語で訪問する、日本人による日本人のためのボランテイア活動グループです。
デンマーク赤十字社の訪問の友は、Tak til Danmarkのネットワーク作りを支援しています。
興味と関心のある方は、誰でも、デンマーク赤十字社の「訪問の友」の講習会を無料で受けることができます。日程および詳細については、Tak til danmark ARIGATOUまでお問い合せ願います。(Tlf. 2065 2003)以上、
Bo Breuning Depner 氏からのご案内でした。
質疑応答の時間には、参加者の方々から俵藤先生へ、実に様々な質問が出されてました。 実際に病気を体験した人も多く、大きな手術を克服した人、また現在、この様な症状で困っているという人など、いろいろな方がいらっしゃいました。どの様な質問にも、終止にこやかにお答えいただき、先生のあたたかなお人柄が伝わってきました。次々と絶えることなく質問が続き、あっというまに終了の時間が来てしまいました。
最後に、フィッシャー・緑さんから閉会のごあいさつをいただき、"日本人会"も目指していた"老後のネットワーク作り"のひとつが、こうして具体化してきたことは非常に喜ばしいことで、今後もお互いに協力し合いましょう、というお話がありました。
終わったあと、俵藤先生のお話がわかりやすくとても良かった、と言う声や、また、是非、第二回目もお願いします、という声が多く聞かれました。
これからもボランテイア・グループ Tak til Danmark ・ARIGATOUは一歩一歩着実に前進してまいりたいと思います。今後とも皆様のご協力、ご支援をよろしくお願いいたします。
俵藤先生、お忙しいなか、素晴らしいお話を本当にどうもありがとうございました。
ご参加いただきました皆様にも、心からお礼を申しあげます。
文: ボランテイア・斎藤由起