2003年11月13日 木曜日(18時~19時)在デンマーク日本大使館インフォメーションセンターにて、第3回健康講演会「糖尿病とは?」を開催いたしました。講師はステノ糖尿病センターに留学中の東京女子医科大学柳沢慶香 (やなぎさわ けいこ)先生でした。
当日は寒さが増す中、33名の参加で、多数の質問もあり関心の高さをうかがわせる講演会となりました。
講演の内容(概要)は、次の通りです。
1、糖尿病とは
糖尿病は、血液中のブドウ糖(血糖)が高い状態が持続する病気です。すい臓のインスリンの分泌が不足したり作用が低下すると、血糖の低下作用が弱まり糖尿病となります。遺伝的な要素も強いですが、過食や運動不足・過度な飲酒などの環境によっても糖尿病になる危険性があります。
2、糖尿病の分類
糖尿病は、大きく二つの型に分けられます。若い人に多いⅠ型(すい臓のインスリン分泌細胞が破壊)と成人に多いⅡ型(インスリン分泌や作用の低下)です。
3、糖尿病の症状
体がだるい・のどが渇く・尿の量、回数が増えたなどがありますが、糖尿病の初期はまったく症状がありません。
4、糖尿病の検査
尿糖は血糖が160~180mg/dl以上ないと出てきません。糖尿病を診断するには、血糖検査が必要です。まず空腹時血糖値が126mg/dl(7.0mmol/l)以上あれば糖尿病を疑います。もっと確実な検査では「経口糖負荷試験」というものがあり、糖分を含んだジュースを飲み時間を追って血糖値を測定します。飲む前の血糖値が126mg/dl(7.0mmol/l)以上、または、2時間値が200mg/dl(11.1mmol/l)以上あれば糖尿病と診断されます。*血糖値の単位が、日本とデンマークでは違いますので注意しましょう。(日本はmg/dl、デンマークはmmol/lです。)
また、血糖コントロールの指標として、ヘモグロビンA1cという血液検査があります。これは過去の1~2か月間の血糖値の平均を反映しています。
5、糖尿病の合併症
糖尿病の合併症としては、次の三つがよく知られています。①神経障害 末梢の神経(手や足)が侵され感覚がにぶってきます。 ②網膜症 初期は全く症状がありません。進行すると失明することがあります。③腎症 進行すると人工透析を受けることになります。また、他に動脈硬化症や糖尿病性壊疽があります。動脈硬化症は、脳梗塞、狭心症や心筋梗塞をひきおこします。糖尿病性壊疽とは、傷・火傷などをきっかけに壊死を起こすものです。
6、糖尿病の予防と治療
糖尿病の予防と治療は食事療法と運動療法が基本になります。食事療法はなんといっても適正なエネルギー量をバランスよく摂ることです。表1に一日の必要カロリー量を掲げておいたので、自分の適正カロリーを確認してください。運動療法としては、有酸素運動が有効です。食後1~2時間後、早歩きの散歩で一日一万歩を目標にしましょう。
7、薬物療法の現在
糖尿病の治療薬は大変進歩し、また、その種類も沢山あります。大きく分けて、①すい臓の働きを良くする薬、②インスリンの効きを良くする薬、③糖の吸収を遅くする薬に分けられます。また、インスリンの種類も、効果の速度によってさまざまです。症状や体重、生活様式によって使用する薬の種類、量、用法が異なりますので、お医者さんの指示に従って使用してください。
8、あなたの糖尿病危険度は?
あなたの糖尿病危険度を測定してみましょう。表2の質問に答えてください。「はい」の合計点が6点以上の人は「危険」な状態ですので、すぐに検査を受けてください。4~5点の人は「要注意」ですので、摂取カロリー量と運動不足に注意してください。
9、糖尿病にならないために
糖尿病は何よりも予防が大切です。表3に日常生活で気をつけることを掲げておきました。
皆さんの糖尿病危険度はいかがでしたか?
はっと!思われた方は早速、食生活や日常生活を見直してみましょう!
講演の中で、日本人は欧米人に比べて、膵臓の予備能力が弱いため糖尿病になりやすいというお話しをうかがい、とてもショッキングでした。
糖尿病は「生活習慣病」のひとつといわれますが、健康な時からバランスよく食べ、適度な運動をして規則正しい生活をすることの大切さを改めて痛感しました。
文、Akiyo Suganuma